2026年4月2日
【2026年4月号】資産の「量」を守り抜くための、「質」への転換—— インフレと地政学リスクを直視する、次世代の資産防衛術
いよいよ2026年度が幕を開けます。
新しい手帳を広げ、目標を書き込み、背筋を伸ばしてこの4月を迎えている方も多いことでしょう。そして、今年度こそは、ご自身のお金回りを整えたい、あるいは資産運用を始めたい、と思っている方もいらっしゃるでしょう。しかし、今期のスタートは、決して例年のような穏やかな春ではなく、厳しいスタートとなったのではないでしょうか。
いま、私たちの目の前にあるのは、情報の濁流です。「土曜日の奇襲」に象徴される不透明な地政学リスクと、それに連動して引き起こされる原油高、そして円安。そもそも、なぜ有事は土曜日に起きるのか。それは西側諸国の市場が閉まり、イスラエル等では安息日で警戒が緩む「空白の時間」だからです。中東であれベネズエラであれ、彼らは常に世界の隙を突いて行動を起こします。あふれるニュースを追うほどに「結局、自分はどうすればいいのか」と立ちすくんでしまう。そんな皆様のために、今回はあえて厳しい現実を直視し、それを「勝機」へと反転させる、実務家としての財務戦略をお届けします。
世の中の事象に踊らされることと決別する。新年度は、まずその覚悟からスタートです。現実の世界にマッチしない古い金融商品は、インフレや有事の嵐の前ではあまりに無防備であり、無策のままでは豊かな未来を実現することはできません。世界で起こることを冷徹に受け止め、いかなる状況下でも通用する強靭な「質(仕組み)」を築き、大切な「量」を守り抜く。ビジネスにおいても資産運用においても、それこそが唯一の解なのです。
月に一度お届けする私のコラムが、皆様と、皆様の大切な方々の情報収集の一助となり、目的地へ向かうための確かなコンパスとしてお役に立てれば幸いです。
序章:「情報のデトックス」 —— 評論家は嵐を語り、実務家は舵を取る
世の中には、ニュースを器用にまとめ、解説するだけの「評論家」があふれています。しかし、彼らの言葉に耳を傾けても、聞けば聞くほど徒らに不安を煽られるばかりです。
実際にお客様の資産をお預かりする実務家として、私は一つの明確な事実に気づかされます。
資産形成の軌道に乗り、真の豊かさを手に入れているお客様ほど、意識的に「情報のデトックス」を行っているということです。市場のノイズを完全に遮断し、1日24時間という有限の命(時間)を、ご自身の本業や愛するご家族など、本当に価値あるものへ全力投球されています。この事象に振り回されない毅然とした姿勢こそが、不確実な時代において最も輝ける、唯一の生き方なのです。それでは、新年度の針路を定めるために、まずはこの激動の1ヶ月がどのようなものであったのか、ご一緒に見ていきましょう。
1.激動の3月を振り返る —— 予測というギャンブルを捨て、強靭な財務設計を
3月、ブレント原油が120ドルを突破しました。この時、評論家は「インフレ懸念」を語ります。そして、市場が恐れているのは、原油高、金利高止まり、米中摩擦といった「リスクの重なり」です。だからこそ、今年は「次に何が上がるか」を当てるギャンブルは娯楽としての役割のみで、成功を収める資産形成の場面においては役に立ちません。何が起きても傷みにくく、日常の時間を奪わない強靭な財務設計を持つこと。これこそが、新年度に真っ先に着手すべき仕事です。
2.今回はセオリー崩壊か?「有事の円・金」から、ドルの「覇権」を宿す次世代のポートフォリオ
最新のニュースでは、米国建国250周年を記念するドル紙幣に、トランプ氏の署名が記されると報じられました。通貨という存在が、より強固な政治的意志を帯び、世界を牽引し続けるという象徴的な宣言です。
かつて、世界が揺れれば「安全資産の円や金(ゴールド)」が買われるという決まりきったセオリーがありました。驚くべきは、「有事の金」までもが下落に転じているという事実です。なぜ有事なのに金が下がるのか。それは、株式市場の急落で大損を抱えた投資家たちが、その穴埋め(現金化)のために、泣く泣く手持ちの金を売り払っているからです。「売りたいものを売るのではなく、売れるものを売る」。これが非常時のマーケットの冷徹な現実です。
結果、米国の圧倒的な高金利とドルの独歩高です。「金利を生まない金」よりも、「高い金利を生み、かつ世界最強の軍事力に裏打ちされたドル」に資金が集中している。これは、世界が「究極の守り」としてドルを選別し始めた証拠です。エネルギー輸入に依存しきる日本にとって、この「ドル一強」はさらなる円安を招く猛風でしかありません。資源国通貨が底堅い一方で、円が独歩安となる現実。「日本に住んでいるから円が安全」という思い込みは、もはや戦略なき放置でしかありません。
3.直視すべき現実 —— 戦争当事国の株が上がり、日本は「円も株も売られる」
ここで一つ、資産を守るために直視すべき現実をお伝えします。皆様は、目下、戦争の当事国となっているイスラエルの株価がどうなっているかご存知でしょうか。暴落するどころか、実は史上最高値を更新しているのです。
ミサイルが飛び交う当事国の株が上がり、遠く離れた平和なはずの日本では円も売られ、株も売られる。そして私たちの生活コストだけが容赦なく跳ね上がっていく。これが金融市場の皮肉な現実です。
なぜ当事国にマネーが集中するのか。そこには「資源」や「防衛技術」だけでなく、米国のトランプ政権を支える巨大な支持基盤、福音派の強固な意志が介在しています。そもそも「福音」とは、イエス・キリストがもたらした「良い知らせ」を意味しますが、彼らにとってイスラエルの保護は、自らの宗教史観に基づく決して譲れない使命なのです。この超大国による「揺るぎない庇護」の確証があるからこそ、市場は冷徹に未来を先読みし、「この戦争が終われば中東の長期的な脅威が取り除かれる」と評価して買いを入れています。
一方で、エネルギーを外に依存している日本にとって、有事はただ富が流出するだけの猛風でしかありません。だからこそ、「日本に住んでいるから円や日本の資産を持っていれば安全」という思い込みを手放し、世界の成長と資源をポートフォリオに組み込むことが急務なのです。
4.新年度スタート・4月改定:制度を「知恵」という武器に変える
新年度を迎えるにあたり、制度改正が行われます。例えば、在職老齢年金の支給停止基準が65万円へ緩和されることは、働く意欲のある方への「報奨金」として歓迎すべき変更点です。しかし、働いて社会に貢献しているのに年金が減らされるという制度は、残念ながら日本だけです。
次に、2026年 確定拠出年金の二段階改定です。今年度の年金制度改正は、皆様の資産をインフレや税金から守る「最強の武器」のアップデートです。ポイントは大きく2つあります。
第1弾(4月〜):企業型DCの「会社頼み」からの脱却
これまで「会社の掛金額まで」しか上乗せできなかったマッチング拠出の制限が撤廃されます。つまり、会社の掛金が少なくても、全体の限度枠内であれば、ご自身の意志で非課税の積立枠をフル活用できるようになります。
第2弾(12月〜):「月額6.2万円枠」への拡充と「70歳」までの延長
企業年金とiDeCoを合わせた非課税枠が、最大で月額6.2万円に拡大します。さらにiDeCoの加入可能年齢が70歳未満へ引き上げられ、「長く働きながら、非課税で長く育てる」仕組みが完成します。これは、国が「自分の資産は自分で守れ」と用意してくれた合法的な防空壕(シェルター)です。インフレで目減りしていく現金を、所得控除という確実なリターン(節税)を得ながら、世界の成長に乗せていく。この制度を使い倒すことこそが、今年度もっとも確実で賢い自衛策の一つとなり得るでしょう。
5.不確実性の時代の救世主、積立運用
AIがこれほどまでに進化するとは誰が予想できたでしょうか。また、AIを駆使した奇襲攻撃によってエネルギー問題が勃発するなど、予想することすら困難です。さらに、為替相場を当てることも、株式相場を当てることも誰にもできません。インフレという「見えない税金」が現金の価値を容赦なく目減りさせていく時代において、相場の動きを正確に当てることなど誰にもできないのです。
だからこそ、積立運用を仕組み化し、長期的に買い続ける。これはどの時代においても王道であり、この姿勢こそが、最も誠実で、最も再現性の高い戦略なのです。
皆様が「お金に困ることなく、選択の自由を謳歌する豊かな人生」を歩み、目的の港に無事たどり着けるよう舵取りを担う。それが、伴走者としての私の使命です。
新年度という、新たな出航の節目。 まずは、ご自身の船が今どこにあり、どんな嵐に耐えられる状態なのか。「現在地の確認」から始めてはいかがでしょうか。
IFA(独立系金融アドバイザー) 園田 悠子

